「自爆営業」は違法の可能性大?
「自爆営業」という言葉をご存知でしょうか?
販売ノルマを達成できなかった商品を、担当営業社員が自腹で買い取るといった行為を指します。こうした行為を強制することは、違法とみなされる可能性が大きいことを認識しましょう。
明らかに過大で客観的に達成不可能な販売ノルマは違法となる可能性がある
「クリスマスケーキの販売にノルマが課され、未達分を自腹で買った」
「おせち料理の販売ノルマをさばき切れず、親と親戚に泣きついて買ってもらった」
「販売目標に届かなかった分のDVDを、すべて自分で買わされ、給料から天引きされた」
このように、販売ノルマを達成できなかった分を、社員に強制的に購入させることを「自爆営業」といいます。
もちろん、販売ノルマを課すことそのものには法的問題はありません。しかし、販売目標が誰から見ても明らかに過大で、客観的に達成不可能であると認められる場合には、例外的に違法とみなされる余地があるといわれています。
また、特定の社員に対する嫌がらせや、退職を強要するために過大な販売ノルマを課すことも、違法となる可能性があるでしょう。
「自爆営業」は労働基準法の「通貨払いの原則」と「全額払いの原則」に反する
「自爆営業」のようなケースはどうなるのでしょう?
労働基準法24条1項では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」として、賃金の「通貨払いの原則」と「全額払いの原則」を定めています。よって、販売ノルマ未達成時に、商品の買い取りを強制されたり、その分の給与天引きが行われたとすると、これらに反することになります。
さらに「通貨払いの原則」とは「賃金は、自社製品や商品などの現物支給ではなく、通貨で支払わなければならない」ということになっています。なので、自社商品を買い取らせるとなると、通貨で支払われた、あるいは支払われる予定の賃金の一部が商品と取り替えられるのと同じということから、「通貨払いの原則」の脱法行為となります。給与天引きの場合も「全額払いの原則」に反してしまいます。
さらに究極的には刑法上の問題になる可能性があります。自社商品の買い取りは、労働基準法の問題が生じ、雇用契約における従業員の義務とすることはできません。にもかかわらずプレッシャーを与えて、本来的に義務のない買い取りを強制すると、強要罪にも該当する可能性が出てくるのです。
このような「自爆営業」を行っていることが、対外的に報じられると、社会的な信用を落とします。仮に社員が自腹を切って売上目標を達成したとしても、社長さんは祝杯を挙げる気持ちになれますか?
現代はかつてと違ってコンプライアンスに敏感な時代。営業のやり方も変える必要があるのです。
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